2008.06.02
【本】 「のら道」その2

この本で特別好きな写真と文が二カ所ある。

小さいころ
いろんな人たちが、
「うちにおいでよ」って
手をさしのべてきたんだ

「やだ」
と答えたぼくに、
もう帰る家はありません。
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わたしも若い頃、人の親切や好意を袖にしてきた。
若者の無知と傲慢ゆえである。
そして、帰るべき場所を見失った。
しかし、それでも生きてゆく。
2008.06.02
【本】 「のら道」 野良猫へのリスペクトを捧げた写真集

『のら道』
文・写真 石津昌嗣
アートン
書店に並んでいる猫の雑誌や写真集はかわいいいペットの写真ばかりだ。
別にそれは悪いことではないが、個人的には野良猫の写真が少ないことが不満である。
一方、ウェブサイトには、ペットではなく、地域猫や野良猫の写真を中心に発表している人たちがいて、彼らの写真は市販の猫写真集とは一線を画していて共感する写真が少なくない。しかしそれでも、描写や構図の完成度を追求した写真が多く、基本的にはかわいくてロマンティックな“作品”として仕上げられていることがほとんどだ。これはある程度しかたのないことだと思うがやはり不満が残る。理想化されることによってリアルな野良猫の生活が感じられなくなるからである。
そんな中で、かわいさや“完成度”を追求しない珍しい野良猫の写真集がこの『のら道』である(急いで補足するが、見る人によっては十分かわいい野良猫である。かわいくないという意味は一見した外観のことを言っているにすぎない。また、当然ある種の逆説的な“完成度”を追求している)。
この本を一言で説明すると、猫のかわいさではなく、野良猫の現実生活を追求した写真集である。もちろん現実生活とはいっても、悲惨な印象をあたえる写真は慎重に避けられている。かわいさに頼らず、かといって悲惨な現実をストレートに出すわけでもないところにこの写真集の創意と工夫を感じる。
この写真集は、逆光でコントラストが低下した写真、ゴーストやフレアーが盛大に出た写真、ピンぼけの写真、手振れした写真――ばかりで、いわゆるきれいな写真がない。もちろん著者は意図して、テーマに合った表現としてそういう描写を選択しているのだ。写真集の形式をとっているが、カメラマンというより作家の作品として受け止めた方がいいかもしれない。
****以下は蛇足*****
デジカメ全盛の昨今、デジカメ掲示板は解像度がどうだ、周辺減光がどうだ、ホワイトバランスがどうだ、と描写論議でかまびすしいが、この写真集を見ていると、無言のうちにそうした描写性能オタクたちを批判しているように思えてくる。どれだけきれいに写るかより、被写体になにを感じとり、なにを表現するのかが重要であることを、この野良猫写真集は改めて教えてくれている気がする。
人様のことはあまり言えないのだが、撮るべきテーマを持たずして、カメラやレンズ性能ばかり追求するのは本末転倒というべきだろう。
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